別れた後、電話には一切応じず、メールの返信も途切れがちになった私に業を煮やしたのか、便箋に入れた手書きの手紙を自宅マンションのポストに投函されたことがあります。

その時すでに、私の彼に対する心情はかなり悪化していました。別れてから2、3ヶ月ほどでしたが、その間に幾度となく電話やメールが来ていました。内容はいつも同じです。

やり直したい、もう一度考え直して欲しい、絶対に変わって見せるからチャンスをくれ。

まったく嬉しくありませんでした。

むしろ、またかという失望に近い感情と、もういいかげんに解放して欲しいという気持ちで、ひとつずつ返事をすることすら億劫になっていきました。

別れるかどうか迷う期間は私の中ではとっくに終わっていて、もう別れようという気持ちが決定的になったからこそ、別れたわけです。

別れる前ならともかく、別れた後でチャンスが欲しいと懇願されても、もう心には響きませんでした。

手紙が来たのはそんな時です。マンションの集合ポストを開けると、内容物で膨らんでいるのであろう、厚みのある白い封筒が入っていました。消印はなし、差出人もなし。

もしかして?と思いながら部屋に入って封を開けると、やはりそれは元恋人である彼からの手紙でした。

私の知らない間に、マンションまで来ていたんだ…!

その事実に気付いた時、まだ近くにいて私の帰りを見張っているのでは?という恐怖に襲われ、急いでエレベーターに飛び乗ったのを覚えています。

悪いのは全部俺、全部直すからもう一度やり直そう

手紙は何枚もありました。破り捨ててしまいたいような気持ちもありつつ、最後まで読みました。

内容は、私と別れてから自分がいかに辛い思いをしているか、別れがいかに予想外のことだったか、どれだけ私のことを想っているか、悪いことは全部直す、どんな努力でもするからやり直して欲しい。

そんな内容でした。

読み終わって、もう一度やり直そうと、気持ちが動いたか?

申し訳ないですが、それはありませんでした。手紙を読んだ感想は「この人は、別れた後までこんなに私を困らせるのか」というだけです。

正直、もういいかげんにして欲しいとしか思えませんでした。

別れた後は、しばらく放っておいて欲しい

この別れ話は、私が別れを切り出した側です。つまり、私が振った側、彼が振られた側ということになります。

一番辛いのはもちろん彼だったと思いますが、別れを切り出す側にも心理的負担があります。後ろめたい気持ちや罪悪感、申し訳ないという気持ちもあります。

別れ話を切り出すだけでもかなり消耗したのに、別れてもなお解放されない。これが続くのは、精神的に辛いものがあります。そしてこの辛さは、そのまま相手への嫌悪になります。

別れた直後は、相手との出来事は「嫌な出来事」としてしか思い出せませんから、放っておいて欲しいというのが、降った側の大多数の本音でしょう。

手紙をくれた元彼の行動の背景には、「少しでも時間が空いたら、本当に別れが決定的になってしまう。そうなる前にやり直さなければ」という気持ちがあったように思います。でも、それは相手にとっては逆効果なのです。

人は、もう触れられなくなった過去ほど美化するものです。不思議なことに、連絡を取らずにいたほうが、相手と過ごした良い思い出が、ふとした時に心をよぎります。

連絡を取らないほうが、むしろあなたの良い記憶はそのまま保存されます。

別れた直後は、無理にやり直したいと迫らず、彼をそっとしておくことも、あなたが彼にしてあげられる優しさではないでしょうか。